家庭医をやっているとよく、「先生の専門は何ですか?」と聞かれます。「とりえのないよろず相談医ですよ。」と答えます。
家庭医は臓器別の専門医とは何が違うのでしょうか? 家庭医は世界中のありとあらゆるところにいます。そこではみんな違う医療を行っているかもしれません。たとえばDrコトーは往診して、お産もやるし、手術もやります。私は川崎北部ですから、お産はやりませんが、グループホームへの往診もするし、多くの企業健診をします。
このように場所が変われば医療の内容が変わるのが家庭医です。専門医はそんなことはあり得ません。心臓外科の医師は世界中どこでも同じ医療を行っています。しかしいろんな顔の家庭医たちには実は共通点があります。それが家庭医の専門性と言われ,ACCCCの頭文字で表される5つがあります。
一つめAはアクセスビリティー(近接性)。
身近であるということです。物理的にも,精神的にも最も近くにいて「あなた」をよく知っている医師です。
二つめCはコンティニュイティー(継続性)。
ずっと、時には世代を超えて、「あなた」と「あなたの家族」をケアします。
三つめCはコンプリヘンシブネス(包括性)。
病気の時も健康な時もなんでも相談に乗り、治療・健康増進・予防を行います。
四つめCはコーディネーション(協調性)。
大病院との連携・地域の訪問看護師・ヘルパー・ケアマネージャーなど、みんなとの連携を大事にします。
五つめCはコンテキスト(文脈性)。
あなたの事情にあわせたケアをします。たとえば在宅ケアや時には専門医の治療を拒否した方のケアなどです。
これら五つの専門性は、大病院の専門医のそれとは違うことがおわかりでしょうか。大病院の専門医がしっかり臓器を診て、最新で超専門的な力を発揮することができるように、私たちには地域で行う雑多な仕事をきちんと専門的に行う役割があるのです。
家庭医療学では、ACCCCの質を高めるためにはどうすればよいかを研究する分野があります。たとえばアクセス(身近であること)に関する研究では、受診を妨げているのは何だろうか? 遠いから? 医者が嫌いだから? 受付の人が無愛想だから? 女性用トイレがないから? 医療費が高いから? などなど。
私は以前に「女性は女性医師を求めているのか」という研究をしました。羞恥心に関係ある健康問題では女性医師に相談したい人が多いという結果が出ました。そのことから診療所には少なくとも週に半日以上、女性医師を配置すべきではないかという提案をしたのです。
家庭医は「身近で、ずっと、何でも、みんなで、あなたの事情にあわせて」ケアを行うことを専門としています。
asao-hp(@)kawaikyo.or.jp
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新百合ヶ丘で家庭医療を行っています。内科・小児科が中心ですが、赤ちゃんからお年寄りまで、病気・介護・健康問題について何でもご相談ください。健康診断・在宅診療・予防接種なども行っています。